今私は小学校でアバックを使った授業を広めています。
セネガルで今まで見た授業のほとんどで、具体的な物(教材)を使った授業は行われていません。
算数では、先生が黒板にチョークで文章題を書いて、子供たちはひたすら解いていく、というのが基本です。
教科書はほとんどのクラスで使われていないので、教科書の絵を子供が見ることはなく、ただ、言葉が黒板にずらっと書いてあるだけの授業です。
これまで見た感じだと、低学年の子供たちの中に1の位、10の位の仕組みを理解していない子がかなりいます。
特に、繰り上がりのある足し算、繰り下がりのある引き算を理解していない子が多いです。
筆算を使っても頻繁に間違えます。
私は、数字を習いはじめる時に、手と同時に物を使いながら考える経験が必要だと思います。
そのため、セネガルの先生の中で知られているけど、用意するのが大変で使われていない「アバック」を広めているというわけです。
日本では、子供たちが使う教材はすぐにそろいます。
なぜなら、日本の学校には教材室があるからです。
セネガルの場合、私が作ったアバックの見本を見せて、子供にまねさせて作ってもらう、というところからのスタートです。
見て、道具を探し、子供自ら自分が使う教材を作る、という図工のような流れです。
全員にお願いすると、率先して作ってくる子が数名いました。
そういう率先して動ける子は貴重な存在なのです。
その子に触発されて次々と子供たちによって学校に持ち込まれました。
中には、珍作品もあるので、そういったものは、
「よく作ってきた!」
と言って、私が地道に直しました。
左 接着剤でキャップがかちこちに固められている。これだと数が数えられない…
右 くぎで貫いて固定されているので、キャップが動かない。3つだけじゃ少ない…
こういう場合は、くぎは引っこ抜き、針金を付けて直します。
次第に、うまく作る子も徐々に増えてきてきました。
そして、先生までもが試作品を作ってきたときは、うれしかったです。
途中で、ある子供の作ってきたアバックがいいヒントとなり、ダンボールと針金だけで、大量生産する方法が思いつきました。
そして、一気に量産することができました。
作ってください!と呼びかけてから1ヶ月以上経って、ようやく全員分用意が整い、授業でアバックを使い始めることができるようになりました。
子供も先生もまだ使い方が分かっていません。
この使い方を私が授業しながら教えていくのが、次のステップです。
初めて道具を使った授業をしている子供たちは楽しそうに見えました。